たぬきのくるむら

たぬきのくるむら
岸田衿子 さく
中谷千代子 え
243号 1976.6.1.


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子どもの頃はただ無邪気に読んでいただけだった絵本も、今読み直すと、はたと気が付き、ぞっとすることがなんと多いことか。この絵本、人が町へ出て行って村が消滅して行く様子を描いている作品でした。翌年の夏かつて住んでいた村に一日だけ戻るというお話。子どもたちが大きくなるに従って、忘れられてしまう村。あるいは、リゾート開発されてしまう村。かつて人は、動物たちと巧く共存していたんだよということを描きたかったのか。こんな風に、作品が誕生した頃の日本の変化が描かれていたなんて、思いもしませんでした。
作者や編集者たちがどんな思いでこの本を世に送り出したのか。もしかすると、「絵本のたのしみ」折り込みふろくに作者たちの思いが伝えられていたのかもしれません。子どもの頃は、自分で直接木から取ったあんずを食べられるなんて、うらやましくて仕方がなかった作品でした。でも、今はちょっと心がざわつく絵本になってしまいました。

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